誤嚥性肺炎を防ぎながら、おいしく楽しく食べる毎日を

登録日:2023年3月3日

誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)とは

誤嚥性肺炎 イメージ図 食事中に咳き込んだり、食事が始まると痰がらみのような状態になったりしていませんか。

 このような症状が出ているときは、食べ物が気管の中に入り込んでしまっているかもしれません。

 本来、気管に入ってはいけないものが気管に入り込むことを「誤嚥(ごえん)」といい、誤嚥によって細菌やウイルスが肺に入っておこる肺炎を「誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)」といいます。

 高齢期に肺炎になると、命にかかわることもあるため、誤嚥を引き起こさない工夫が必要です。

誤嚥して炎症を起こすもの

  • 食べ物、飲み物
  • 口の中の細菌
  • おう吐したとき、吐いたものと胃液を誤って吸い込む

症状

 誤嚥性肺炎の症状は、肺炎球菌感染による肺炎の症状と同じです。

 発熱などの他に、咳が長期間続いたりなどの症状がみられますが、高齢期には、症状が出にくいこともあります。

肺炎の症状

高齢期になると、誤嚥しやすくなる

 高齢期になると、次のような理由から、誤嚥しやすくなります。

  • 食べ物を飲みこんでも、のどに残りやすい
    (食べ物を十分噛めない、口や舌・のどの筋肉及び筋力が落ちている、唾液の出る量が少ないことなどが影響しています)
  • 食べ物などが、誤って気道に入っても、せき込まない、または、せき込みが弱い
    (のどの筋肉及び筋力が落ちている、のどの反射が弱いことなどが影響しています)

誤嚥性肺炎 フロー図

 

 また、下図のとおり、誤嚥性肺炎を発症する方は、85歳を超えると、とくに多くなる傾向にあることが分かります。

誤嚥性肺炎による医療機関受診者数

出典:KDBシステム/長野県後期高齢者医療制度に加入している75歳以上の者から抽出

 

 では、誤嚥性肺炎を予防するために、普段の生活において、どのようなことに気を付けたらよいか、以下に紹介します。

誤嚥性肺炎の予防方法

(1)食事のとき、むせない工夫をする

 むせやすい食品の一例と、むせないための工夫を紹介します。

むせやすい食品

  • 水・お茶など、さらさらした液体
  • 味噌汁など、液体と固体が混ざった料理
  • いも類・木綿豆腐・ひじき・かまぼこなど、ぱさぱさ・ぼろぼろした食べ物

「食べ物」を工夫する

1.とろみをつける

 口の中の食べ物をひとまとめにして飲み込めるように、とろみをつけるなど工夫しましょう。

  • あんかけ
  • 卵とじ
  • 市販のとろみ剤を使う
2.飲み込みやすい形にかえる

 口やのどに張り付きやすいものは、飲み込みやすいように形を変えましょう。

  • 海苔は、板海苔ではなく佃煮に変更する
  • 薄切りキュウリやレタスなどは、ぺらぺらしない形に切る
    (千切り・やや厚めに切る、葉物野菜は巻いて食べるなど)
  • お餅・お団子などは、小さくちぎる・とうふ白玉に変更する
    (白玉粉を木綿豆腐の水分で丸めて白玉にする)

注意:お餅を食べるときは、窒息防止のため、必ず誰かが見守っている状況で食べるようにしてください。

 

「食べ方」を工夫する

1.食べる姿勢を整える

 誤嚥しにくい姿勢をとり、食べることに集中します。

  • 顎を引く
  • 椅子には深く腰掛け、かかとをしっかり床につける

食べる姿勢

2.のどの通りをよくする

 食事の前に水分を摂り、のどの通りを良くします。

3.少しずつ食べる

 一口で食べる量を少なめにして、ゆっくり食べます。

 

「介助の方法」を工夫する

 食事の介助をする方ができる工夫もあります。

  • 座って介助する
    (介護者が立っていると、食べる人の顎があがってしまうため)
  • 飲み込んだことを確認してから、次の一口を差し出す
  • 話しかけるのは、口の中に食べ物がないときにする

 

(2)飲み込む力をつける

 飲み込みの力を維持するため、また、唾液を出やすくするために、口やのどの体操をしましょう。

 口周りや、のどの筋肉・筋力が上がることに加えて、口の乾燥を防ぐことや、オーラルフレイルの予防にも繋がります。

飲み込む力をつける運動

  • 舌を口の中ではじいて「タッ」と音を立てて鳴らす。
  • 舌で左右の頬を内側から押す。
  • 額に手を当て、押しながらゆっくり5秒数えながら、下を向く。
  • 口を閉じて、つばを飲み込む動作(ごっくんの途中)を3秒間キープする。

どれも、無理のないように行いましょう。

 

(3)口の中の細菌の量を減らす

 高齢期は、唾液の出る量が少ない、歯磨きが不十分、義歯の手入れが不十分などといった状況により、細菌が多く繁殖する条件が揃いやすい年代です。

 口の中には、常に細菌がいますが、口の中を清潔に保つことで、細菌が増えないようにすることができます。

  • 起床したら、口をすすぐ
  • 食事のあとは歯磨きをする
    (舌ブラシで舌の掃除をすると、なお効果的です。寝る前にも磨くと、更に衛生的です。)
  • 義歯は、外して丁寧に洗う
  • 定期的に歯科医院に行き、お口が清潔か、かみ合わせに支障がないかをみてもらう
    (歯や歯肉の治療、及び義歯の調子を整えることができます。)

 

(4)普段から免疫力を高めておく

 普段から免疫力を高めておき、細菌やウイルスと戦う力を備えておくことも、誤嚥性肺炎の発症予防のために重要です。

 十分な睡眠をとる、換気をする、冬は暖かくして過ごすことがおすすめです。

 また、主食・主菜・副菜のそろったバランスの良い食事をとることで、免疫力を高めることができます。

 誤嚥しないように工夫しながら、おいしく楽しく食事をとり、毎日を元気に過ごしましょう。