フレイルについて

登録日:2020年6月5日

フレイルとは

 フレイルとは、病気の名前ではなく、年齢を重ねることで、体や心の動きが弱くなってきた状態を表す言葉です。

 フレイルの状態のまま、何もしないでいると、更に筋力や心身の活力が低下して、体や心の病気になりやすくなります。そしていずれは、介護が必要な状態に至ると言われています。

 このページでは、フレイルになる要因と、フレイルを予防・改善するために今からできることをご紹介します。歳を重ねても自分らしく生きるために、ぜひ参考にしてください。

 

フレイルとは、どのような状態なのか

 フレイルとは、体や心の動きが弱くなってきた状態を表す言葉ですが、具体的にどのような状態に該当すれば、フレイルとされるのでしょうか。

 フレイルについて、統一された基準はありませんが、日本では、次の国立長寿医療研究センターで行われた研究による基準(注1)が、広く知られています。

フレイル評価基準表(注1)

 下記の5つの評価基準のうち、3つ以上に該当するものをフレイル、1つまたは2つに該当するものをプレフレイル(注2)、いずれにも該当しないものを健常または頑健とされます。

評価項目 評価基準
1.体重減少

「6か月間で2~3kg以上の(意図しない)体重減少がありましたか?」に「はい」と回答した場合

2.倦怠感 「(ここ2週間)わけもなく疲れたような感じがする」に「はい」と回答した場合
3.活動量

「軽い運動・体操(農作業も含む)を1週間に何日くらいしてますか?」及び

「定期的な運動・スポーツ(農作業を含む)を1週間に何日くらいしてますか?」の

2つの問いのいずれにも「運動・体操はしていない」と回答した場合

4.握力 利き手の測定で男性26kg未満、女性18kg未満の場合(注3)
5.通常歩行速度

(測定区間の前後に1mの助走路を設け、測定区間5mの時を計測する)

歩行速度が、1m/秒未満の場合(注4)

(注1)長寿医療研究開発費 平成26年度 総括報告書 フレイルの進行に関わる要因に関する研究(25-11) (国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター)

(注2)プレフレイルとは、フレイルに至らない前段階を指します。

(注3)(握力計がない方へ)未開栓のペットボトルのキャップを開けるのが難しいことがある場合は、握力が20kg未満であると言われています。(ただし、手の大きさや、指の力によって変わりますので、おおよその目安としてください。)

(注4)おおよそ、横断歩道を青信号で渡り切れる速度を目安にしてください。

 

なぜ、フレイルになるのか

 加齢により生じる身体の衰えは、誰にでも起こることです。

 しかし、フレイルは、単に身体的な衰えだけで起こるのではなく、うつや認知機能の低下などの精神・心理的な面、閉じこもりや独居生活といった社会的な面、など様々な要因が重なって引き起こすものと考えられています。

 フレイルを引き起こす主な3つの要因について、具体的にご紹介します。

身体的要因

  • 骨を動かす筋肉量の減少
  • 筋力の低下
  • 身体機能の低下
  • 目や耳・口の衰え
  • 消化・吸収能力の衰え
  • 脳卒中などの後遺症
  • 低栄養(身体を動かすために必要な栄養が足りていない状態)

など

精神・心理的要因

  • 判断力・理解力・思考力・記憶力の低下
  • 気持ちの落ち込みや意欲の低下
  • うつ状態
  • 身体が思うように動かないことに対するストレス

など

社会的要因

  • 閉じこもり
  • 経済的問題
  • 独居生活
  • 近所に友人や頼れる人がいない

フレイルの進行

 

フレイルを予防・改善するために気を付けたいこと

 食生活を改善したり、意欲を持って暮らしたりすることは、筋力や心身の活力を高めることに繋がります。

 いつまでも元気で健やかな毎日を送るために、フレイルを予防・改善する生活習慣を身につけましょう。

 ただし、医師の治療を受けている方は、かかりつけ医と相談の上、実施してください。

(1)食生活

 「低栄養状態」という身体を動かすために必要な栄養が足りていない状態であると、フレイルになってしまうことがあります。

 食事は、体をつくるために、とても大切です。元気な毎日を過ごすためにも、いろいろな食材を、バランス良く食べましょう。一度にたくさん食べられないときは、間食も含めてバランスを取りましょう。

 主食・主菜・副菜・汁物等を、どのようなバランスで摂ればよいか、ご紹介します。

食事の適量(75歳以上の方の目安量)

主食

 主食は、体を動かすエネルギーや体温の維持のもとになります。

 一食あたりの目安の量は、次のとおりです。ただし、主食の場合は、一日の活動量や、年齢・性別により、一食あたりの目安の量が異なります。自身の体に合わせた量を食べましょう。

 

*男性・75歳以上・体重60kgほど・活動量が少ない方の場合

  • ごはん:1杯(150gくらい)
  • パン:食パン8枚切りを2枚くらい
  • ゆでうどん:1玉くらい

など

 

*女性・75歳以上・体重50kgほど・活動量が少ない方の場合

  • ごはん:1杯(100gくらい)
  • パン:食パン6枚切りを1枚くらい
  • ゆでうどん:1玉の6割くらい

など

主食

主菜(良質なたんぱく質のおかず)

 主菜は、筋肉や血液などをつくるもとになります。

 一日あたりの目安の量は、次のとおりです。ただし、栄養が偏らないように食事毎に種類を変えて、バランス良く食べましょう。

  • 魚の切り身:1切れ

  • 薄切り肉:2~3枚

  • 豆腐:1/3丁~1/2丁

  • 卵:1個

主菜

副菜・汁物(野菜のおかず)

 副菜・汁物は、体の働きを円滑にするビタミンやミネラルのもとになります。

 季節の野菜を取り入れながら、緑黄色野菜淡色野菜を組み合わせて食べましょう。おおよそ握りこぶし2個分くらいの野菜のおかずを、毎食食べるように心がけましょう。

 一日あたりの目安の量は、次のとおりです。

  • 緑黄色野菜:150g (人参・ほうれん草・小松菜・モロヘイヤ・ブロッコリー  など)
  • 淡色野菜:200g (キャベツ・大根・白菜・きゅうり・玉ねぎ など)
  • きのこ:50g
  • 海藻類:少々 (水に戻したわかめであれば、30gを目安に)
  • 芋類(どれか1種類)
    じゃがいも:中1個(約100g)
    さつまいも:約60g
    長芋・里芋:約120g

副菜・汁物

牛乳などの乳製品

 牛乳・乳製品も、良質なたんぱく質とカルシウムを摂ることができます。毎日の食事や間食に取り入れてみましょう。

 一日あたりの目安の量は、それぞれ次のとおりです。

  • 牛乳:コップ1杯+1/4杯(約250ml)
  • ヨーグルト:250g
  • チーズ:50g
  • スキムミルク:大さじ4杯(25g)
    (コーヒーや紅茶、料理に取り入れても良いです。)

乳製品

果物

 ビタミン・ミネラル・食物繊維を含んでいます。体の調子を整える食品です。

 一日あたりの目安の量は、それぞれ次のとおりです。しかし、甘いので、食べ過ぎないことが大切です。

果物の1日当たり基準量

ビタミンDについて

 ビタミンDは、筋力増強や骨を強くする働きがあります。

 また、ビタミンDは、日光の紫外線により、皮膚でも生成されます。家に閉じこもらず、外に出ることも大切です。

ビタミンDを多く含む食品例
  • きのこ類
  • 魚類

(2)運動

 適度な運動で、筋力の低下を防ぎましょう。日常生活の中で、こまめに体を動かすように意識することが大切です。

 今より10分多く歩くことでも、体力を保つことに繋がります。筋力トレーニングを加えると、なお効果的です。

 衰えた骨や筋肉を取り戻すためには、適度な筋力トレーニングを、毎日続けることが効果的です。運動に慣れていない人は、週2~3回からでも、自分のペースで続けていきましょう。

 なかでも、足腰の筋肉は、人間の体において、大きな部分を占めます。足腰の筋肉をつける運動をすることで、フレイルを効果的に予防・改善することができます。

太もも上げ運動

 いすに座った状態で、太ももを上げ下げします。
 呼吸をするペースで10回繰り返し、これを1日3回行うことを目安としてください。

屈伸運動

 いすや、机につかまった状態で、膝の屈伸をします。
 ご自身に合わせた回数で、無理のないように行ってください。

(3)社会参加・こころ

 社会参加は、フレイルの予防につながります。楽しく外出できるよう、心身を健やかな状態に保ちましょう。

外出するように心掛ける

 買い物や散歩、通院など、家の外に出ることは、身体の活動量を増やし、人との会話や交流も生まれます。

身なりを整える

 おしゃれをしたり、身だしなみを整えたりしておくことで、行動的になり、外出するきっかけになります。

趣味を楽しむ

 趣味を楽しんだり、積極的に人との交流をもったり、コミュニケーションを行うことは、脳細胞の活性化に役立つといわれています。

自分の気持ちに合わせる

 自分の気持ちが乗り気ではないのに、無理をして外出したり、何かをしたりする必要はありません。
 今日は、気持ちがいまひとつ。そんなときは、ゆっくり過ごすのが良いでしょう。

 

フレイルに関する相談先

 「もしかして、フレイルかも…」「フレイル予防のための事業に参加したい」など気になることがありましたら、お住まいの市町村の健康づくり関係課・介護保険関係課・地域包括支援センターに相談してみましょう。

 

参考資料