「暑いなぁ」と感じる前に、熱中症対策

登録日:2023年4月20日

なぜ熱中症になるのか

 人は平熱に保つために、暑い環境では汗をかき、血液の流れを活発にして、熱を外に逃がします。

 しかし、体に十分な水分・塩分がなく汗を作れなかったり、血流が滞ったりすると、臓器が高温にさらされて熱中症がおこります。

熱中症の症状

 熱中症になると、次のような症状が現れます。症状の度合いによって、Ⅰ度~Ⅲ度に分類されています。

熱中症の症状

(具体的な対処方法は、後述します。)

 

高齢になると、熱中症になりやすい

 近年、熱中症で救急搬送された方は、年齢層別で65歳以上の高齢者が最も多く、全体のおよそ半分を占めています。歳を重ねると、熱中症になりやすくなる傾向にあることが分かります。

熱中症による救急搬送数

(出典)総務省消防庁 熱中症による救急搬送人員に関するデータ(平成30年から令和4年まで・各年5月~9月)より長野県後期高齢者医療広域連合が作図。

 

高齢になると、熱中症になりやすい理由

 では、なぜ高齢になると、熱中症になりやすくなるのでしょうか。理由はいくつかありますが、主に、次の5つの理由が挙げられます。

1.暑いことに気づきにくい

 自分のいる環境が暑いと感じにくくなるため、日陰に避難するなど、暑さに対処し始めるのが遅れてしまいます。

2.汗が出にくい

 汗腺(皮膚にある汗を出す細胞)が減ってしまうため、汗を出す働きが弱まり、汗が出にくくなります。そのため、体に熱がこもりやすくなります。

3.のどの渇きを感じにくい

 のどの渇きを感じにくくなるため、水分を摂るのが遅くなり、脱水状態になりやすくなります。

4.もともと体液量・血液量が少ない

 成人の体の約60%は水分ですが、高齢期になると、50%まで低下します。汗をつくるための水分が、若年期と比較して少ないため、脱水症状になりやすくなります。

5.持病のある方が多い

 心疾患、糖尿病、精神神経疾患、広範囲の皮膚疾患のある方は、その疾患の作用によって、体温調節が難しい状態になってしまう場合があります。また、普段飲んでいる薬の副作用によって、脱水状態になりやすくなる場合もあります。

 

熱中症はどこで起こるのか

 熱中症は、屋外だけで発症するものではなく、屋内においても発症します。

 熱中症の発生場所を見ると、住居で熱中症になることが一番多く、全体の39.5%を占めています。家の中で過ごす場合も、熱中症にならない工夫が必要です。

熱中症の発生場所

(出典)総務省消防庁 熱中症による救急搬送人員に関するデータ(令和4年5月~9月)より長野県後期高齢者医療広域連合が作図。

熱中症を防ぐための対策

 熱中症は、事前に対策をしておくことで、予防できます。

 体が暑さに慣れていないうちは、汗がまだ上手に出ない時期です。梅雨の中休みなど、急に暑くなる日は特に注意が必要です。

 また、体調がすぐれないときも、熱中症になりやすいため、注意しましょう。

1.暑さを避ける

「部屋の工夫」
  • 風通しをよくする
  • すだれ・よしず等で日光を遮る
  • エアコンを使う(エアコンの風が身体に直接当たらないよう、風向きを調整すると、体が冷えすぎず快適に使うことができます)
「衣類の工夫」
  • 汗をよく吸う素材、ゆったりした服、帽子や日傘を使う
  • 熱を吸収する黒色系の服は避ける
「行動の工夫」
  • 体感だけでなく、天気予報や気温計を見て、暑さをチェックする
  • 暑い時間帯を避けて外出する
  • 日陰を選んで歩く
  • お風呂は、温度が40度以下のぬるめのお湯にして、長湯をしない

2.こまめな水分補給

 のどの渇きを感じる前に、水分を摂りましょう。入浴時や睡眠時にも汗をかくため、入浴や睡眠の前後に水分を摂りましょう。

3.こまめな休憩

 作業等に夢中になっていると、暑さやのどの渇きに気づきにくくなります。いつもよりこまめに休憩をとるよう意識しましょう。

4.暑さに備えた体力づくり

 日頃から運動をして、汗をかく習慣をつけておくと、急に気温が高くなった日にも十分汗をかくことができ、熱中症を防げます。

 ただし、運動は暑い時間帯を避け、涼しい時間帯に行いましょう。

5.緊急連絡先を確認しておく

 緊急時や困ったときの連絡先を決めておくと、熱中症の症状が重くなる前に、すぐに助けを呼ぶことができます。

 

熱中症かも、と思ったときの対処方法

 熱中症かもしれないと思ったときは、すぐに対処をすることが重要です。次のような症状が出たときは、すぐに対処してください。

(画像再掲)

熱中症の症状

 すぐにできる対処方法については、次のとおりです。ぜひ、参考にしてください。

 ただし、症状が重度になると、一人だけで対処することが難しくなり、介助が必要になる場合があります。介助をする際も、下記の対処方法を参考にしてください。

1.涼しい場所への避難

 風通しの良い日陰や、クーラーが効いている室内に避難します。

2.衣類を脱ぐ

 血流を良くすること、風通しを良くすることで、体の熱を逃がすことができます。衣服を脱いだり、きついベルトやネクタイ、下着はゆるめたりして、風通しを良くします。

3.身体を冷やす

 露出させた皮膚や、服の上から水をかけて、うちわや扇風機などで扇いで、体を冷やします。

 氷や冷たいペットボトル等を、首や脇、太ももの付け根に当てて冷やすことも効果的です。

4.水分・塩分の補給(意識がある場合のみ)

 冷たい水や、経口補水液、スポーツドリンク、食塩水(水1L+食塩1~2g)が有効です。汗で体の水分が失われているため、どんどん飲んでください。

 ただし、意識がはっきりしない場合は、水分が気道に流れ込む危険があるため水分は摂らせず、すぐに医療機関を受診してください。

5.医療機関を受診する

 意識がはっきりしない、水を飲んでも吐いてしまうなど、自分で水分を摂れない時は、すぐに医療機関を受診してください。

熱中症の応急処置フローチャート

熱中症の応急処置

(出典)環境省「熱中症環境保健マニュアル 2022」

 

参考資料