お薬と、安全に付き合っていくために
あなたは、お薬を何種類飲んでいますか?
年齢を重ねると、持病の数が多くなる傾向にあります。また、慢性化する病気が多くなるため、病気が多くなるほど、処方される薬も多くなっていきます。結果的に、若年期と比較して、高齢期になると、薬の量や使う回数が増えてくるのです。
長野県の後期高齢者医療保険の場合は、1か月間に7種類以上の薬剤を処方されている方が最も多く、全体の41%を占めています。
(出典)長野県後期高齢者医療保険の令和2年2月診療分の外来(医科・歯科・調剤)の診療報酬明細書からKDBシステムを使用して作成。対象者は、長野県後期高齢者医療被保険者のうち、令和2年2月に外来の受診をし、かつ薬剤の処方が1種類以上あった者(n=261,432)。
高齢期になると、副作用が起こりやすくなります
高齢期になると、身体の働きが変化して、薬の副作用が起こりやすくなります。
通常、飲み薬は、服用して効き目を発揮した後、徐々に肝臓で分解され、腎臓から排泄されて、効き目がなくなります。
ところが、高齢期になると、肝臓や腎臓の機能が低下してしまい、代謝や排泄までの時間がかかるようになるのです。
そのため、体内に薬の成分が残っている時間が長くなってしまい、薬が効き過ぎたり、副作用が強く現れやすくなってしまうのです。
例えば、服薬した後に、こんな症状はありませんか?
- ふらつく、よく転ぶ
- もの忘れ
- 頭が混乱して興奮する
- ぼーっとする
- 食欲がなくなった
- 便秘
- トイレが近い、尿が漏れる、尿が出にくい
これらの症状は、薬の副作用によって起こることがあります。
薬を服用したことで、上記のような症状が起きたときは、かかりつけの医師や薬剤師に相談してみましょう。
こんな困ったことは、ありませんか?
薬の管理が大変になり、使わなかった薬が溜まる
薬の量や種類が増えると、管理が大変になります。
薬を飲み忘れたり、自分の判断で服薬をやめたりすると、使わなかった薬(残薬)がどんどん溜まっていきます。
薬を飲んだのか飲んでいないのか忘れてしまう
間違えて違う薬を飲んでしまう
加齢が進むと、視力・聴力・認知機能の低下により、薬の誤服用に繋がりやすくなることがあります。
お薬をしっかり管理して、安全に服用しましょう
~重要な2つのポイント~
安全に薬と付き合っていくためには、しっかりと管理することが大切です。お薬手帳や、かかりつけ薬局等を活用しましょう。
(1)お薬手帳を上手に使う
お薬手帳とは
あなたが使っている全ての薬を記録するための手帳です。持っていない方は、薬局で作ってもらうことができます。
どこで使えるのか
病院
お薬手帳を医師に見せると、ご本人の体調と、今飲んでいるお薬との因果関係を踏まえながら、診察をしてもらえます。
医師は、手帳に書いてある全ての薬を把握し、その上で、適切な種類・量の処方箋を出します。
薬局
薬局では、薬剤師が手帳を見て、副作用や飲み合わせ、薬の量が適切かどうかなどをチェックします。また、処方された薬は、薬剤師が薬の名前や飲み方等を、お薬手帳に記録します。
その他に使える場面
- 災害時や、旅先での急病やケガのときにも役立ちます。
- 市販の薬や使っているサプリメントも書いておきましょう。服薬後、体調に変化があったら、それも書いておくと、医師や薬剤師に相談するときに役立ちます。
お薬手帳を上手に使うために、最も大事なこと
お薬手帳は、『一冊に情報をまとめる』のがミソです。受診している病院ごとに分けるのではなく、複数持っている方は、薬局で一つにまとめてもらいましょう。
(2)かかりつけ薬局をひとつ決める
かかりつけ薬局とは
あなたが、今まで服用してきた薬や、今後服用する薬に関する情報を、全て管理してくれる薬局です。
複数の医療機関から処方箋をもらった場合でも、それぞれ違う薬局に処方箋を持っていくのではなく、自分でかかりつけ薬局をひとつ決めて、その薬局に全ての処方箋を持って行くようにしましょう。
かかりつけ薬局でできること
薬について、なんでも相談できる
「このお薬はいつまで飲めばいいの?」「サプリメントと一緒に飲んで大丈夫?」などなど…。このような薬の相談に乗ってくれるのが、かかりつけ薬局です。
また、薬局によっては、自宅まで薬剤師が来て、家庭における薬の管理について、相談に乗ってくれます。
飲み忘れ・飲み残しを防げる
飲みにくい形状の薬がある場合、薬を液状にしてもらったり、飲む回数を減らすなど、工夫できる点があるかもしれません。飲み忘れ防止のために、お薬をまとめて一包化することも相談できます。
また、服用せずに残った薬(残薬)は、かかりつけ薬局へ返しましょう。
残薬があると、間違えて必要時以外に服用してしまい、体調を崩すリスクがあります。”もったいないから”といって残しておくのではなく、体調が悪くなったらその都度、身体にあった薬を、必要な分だけ処方してもらうようにしましょう。
同じような薬・飲み合わせの悪い薬が処方されていないかをチェックしてもらえる
複数の医療機関を受診していると、それぞれの医療機関から同じような薬が処方される可能性があります。
かかりつけ薬局では、処方されたお薬の情報を全て管理しているので、同じような薬が処方されていないか、飲み合わせの悪い薬が同時に出されていないかを確認することができます。
「飲む量を変えたい」「飲む回数を減らしたい」…
まずは、かかりつけの医師・薬剤師に相談しましょう
薬は決められた量より多く飲んだからといって、よく効くものではありません。多く飲むことによって、副作用や中毒が現れることもあります。
また、症状が治まったからといって、かかりつけの医師や薬剤師(薬局)に相談せずに使用をやめると、病気が再発することや完治しないことがあります。自分ひとりで判断せず、まずは、かかりつけの医師や薬剤師(薬局)に相談しましょう。
参考資料
- 日本医療研究開発機構研究費「高齢者の多剤処方見直しのための医師・薬剤師連携ガイド作成に関する研究」研究班・日本老年薬学会・日本老年医学会,高齢者が気を付けたい多すぎる薬と副作用,2016
- 厚生労働省・日本薬剤師会,知っておきたい薬の知識,2019
このページに関するお問い合わせ先
長野県後期高齢者医療広域連合
事務局 保健事業室
電話:026-229-5320