オーラルフレイルについて

登録日:2020年4月9日

オーラルフレイルとは

オーラルフレイルとは、口・のどの機能の老化・衰えを意味します。

「食べる量が減ったなぁ」「食欲がわかないなぁ」「食事に時間がかかるようになった」…そんなときは、口の働きが弱まっている可能性が高いです。対処をせずにそのままにしておくと、筋力や心身の活力が低下して、身体や心の病気になりやすい状態(フレイル)に繋がり、将来的に介護が必要な状態になりやすくなってしまいます。

早いうちから対処していくことで、口の働きを維持・向上することができます。

オーラルフレイルとは、どんな状態?

オーラルフレイルの状態になっているときに、よくみられる事象は、次のとおりです。

  • 噛めない食品が増えた
  • 唾液の量が減った
  • 口の中に食べ物が残る
  • お味噌汁が飲み込みにくくなった
  • ムセやすくなった
  • 食事に時間がかかる
  • 食欲がわかない
  • 食べる量が減った
  • 食後にしゃがれ声になる

噛めない食品が増えたり、飲み込みにくくなる原因は?

急に噛めない食品が増えたり、飲み込みにくくなることはあまりありません。その状態に至るには、主に次の原因が考えられます。

  • 舌・口・のどの筋力が低下する

  • かみ合わせが悪くなる

  • 歯周病によって、歯・歯ぐきの状態が悪化する

これらの状態を予防・改善するために、どのようなことに気を付けたらよいでしょうか。下記で、ご紹介します。

 

オーラルフレイルを予防・改善するために気を付けたいこと
~家庭でできる 口・のどの機能を守る対策~

(1)口の衛生状態を保ち、歯周病を防ぐ

歯周病になると、歯周病菌が歯肉に炎症をおこし、さらには歯を支える骨を溶かして、歯をグラグラにさせてしまいます。歯や歯肉を守るために、歯周病対策は重要です。

また、歯周病の原因である歯周病菌が肺に入り込むと、肺炎を引き起こします。さらに、歯周病菌が歯肉から血管に入り込むことで、心臓病、糖尿病など全身の疾患に影響を及ぼすことがあります。

口の中の細菌を増やさないために、衛生状態を保ちましょう。

口の衛生状態を保つポイント

  • 起床したら、口の中をすすぎましょう。
  • 食事のあとは歯を磨きましょう。(加えて、寝る前にも磨くと、さらに衛生的です。)
  • 義歯は、外して綺麗に磨きましょう。
  • 舌の清掃も大切です。
  • 定期的に歯科医院を受診し、かみ合わせやお口全体の状態を診てもらいましょう。

(2)口の中の乾燥を防ぐ

  • 口をよく動かすことで、唾液が出て、口の乾燥を防ぐことができます。唾液腺マッサージを1日3回行うと効果的です。無理せず優しく行いましょう。
  • 水分摂取やうがいも行いましょう。

唾液が出るようになるマッサージ(唾液腺マッサージ)

耳下腺

両耳の横の頬を、親指以外の4本の指で後方から前方に向かって円を描くように10回マッサージします。

顎下

耳の下から顎の下の柔らかいところを5か所位に分けて親指で10回押します。

舌下腺

両手の親指で、顎の下を10回押します。

(3)正しいかみ合わせを保つ

かみ合わせが悪いと、虫歯や歯周病の原因にもなります。食べにくさを感じてきたら、かみ合わせにも原因があるかもしれません。

自分のかみ合わせがどのような状態なのか、歯科医院で確認してもらいましょう。

  • 義歯、虫歯、歯周病などで歯科治療を受けたときに、かみ合わせも確認してもらいましょう。
  • 普段の生活で、歯や顎に負担をかける癖や習慣があれば見直しましょう。
    (片側だけでかむ、同じ側だけする頬杖、うつぶせ寝 など)
  • 食事の際、1口に20~30回噛むなど、左右の歯でよく噛んで食べましょう。

(4)飲み込む力をつける

歳を重ねると、「飲み込む力」が衰えることで、食べ物や飲み物が誤って気道に流れ込む「誤嚥」になりやすくなります。

「誤嚥」をしてしまうと、口の中の細菌が肺に入り、肺炎がおこることがあります。これを、誤嚥性肺炎といいます。

口の中を清潔に保ち、食べる機能を守るために、飲み込む力が弱くなったと感じたら、飲み込む力をつける運動を心がけましょう。

飲み込む力をつける運動

  • 舌を口の中ではじいて「タッ」と音を立てて鳴らす。
  • 舌で左右の頬を内側から押す。
  • 額に手を当て、押しながらゆっくり5秒数えながら、下を向く。
  • 口を閉じて、つばを飲み込む動作(ごっくんの途中)を3秒間キープする。

どれも、無理のないように行いましょう。

お茶や汁物等でむせることがある方は、とくにご注意ください

「お茶や汁物等でむせることがある」と自覚のある人は、その数年後に、何らかの理由によって介護にかかる費用が高くなる傾向にあります。

飲み込みづらさ、むせるようになったと感じ始めたら、早めに飲み込む力をつける運動などを行い、飲み込む力の維持・向上に努めましょう。

1人当たり年間介護給付費(円)の比較

(出典:平成27年度長野県後期高齢者歯科健診の質問票結果による1人当たりの年間介護給付費(円)の経年比較。平成27年度長野県後期高齢者歯科健診で受診者が回答した内容(n=2,689)によって、介護給付費にどのような差が生じたか、結果を分析した。介護給付費は、介護サービス利用料のうち、利用者の自己負担分(1割・2割・3割のいずれか)を除いた金額を指す。)

 

定期的に歯科口腔健診を受けましょう

定期的に歯科口腔健診を受けることにより、口の中を健康で良い状態に保つことができます。

口の中を良い状態に保つこと自体が、健康寿命を延ばすことにつながります。高齢期の口の中の健康維持には、毎日の自分でのお手入れと、専門家によるチェックの両方が必要です。    

いつまでも心身ともに豊かで健康な生活を送るために、歯科口腔健診を受け、毎日の歯と口のケアに活かしましょう。

なお、歯科口腔健診は、広域連合でも実施していますが、お近くの歯科医院で歯・口の状態をチェックすることもできます。詳しくは、お近くの歯科医院へご相談ください。

かかりつけの歯科医院を持ちましょう

普段から「かかりつけ歯科医院」をもっていると、継続的な治療のほか、口の中の心配ごとを相談することができます。

併せて、歯科医院で定期的に歯科口腔健診を受けることができるので、口の中を健康で良い状態に保つことができます。

 

ちなみに…歯科口腔健診を受けた方は、将来の医療費も少なくなる傾向にあります

歯科口腔健診では、口や歯の衛生状態、口腔機能の状態、治療の必要性などを確認することができます。

そのため、歯科口腔健診を受けた方は、受けていない人よりも、生活習慣病等の病気が重症化せず、医療費が少なくなったことが考えられます。

1人当たり年間医療費(円)の比較

(出典:平成27年度長野県後期高齢者歯科健診受診有無による1人当たりの年間医科医療費の経年比較。平成26年度に75歳に到達した者を対象として実施した平成27年度長野県後期高齢者歯科健診について、歯科健診の受診の有無によって、その後の医療費の推移にどのような差が生じたか、結果を分析した。医科医療費には、歯科医療費は含まれない。)